コラム

小学校への出前講座【あかりの環境学習】活動 「身近なあかり(照明)に興味を持とう」

【環境・社会】2009年4月1日 印刷表示

小学校への出前講座【あかりの環境学習】活動
「身近なあかり(照明)に興味を持とう」

~ 照明とは何?あかりを知るところから始めよう、たのしい環境配慮 ~


はじめに
 プリンス電機では、地球温暖化防止活動の推進と、地域を中心とした社会貢献を展開するため、1.スリムエコ製品 2.スリムエコ活動 3.スリムエコ企業の3つの「スリムエコ」を宣言しています。
 その中のスリムエコ活動「環境コミュニケーション活動から未来に続くスリムな社会を創ります。」では、大切な活動のひとつとして「未来の担い手、子供たちを対象に環境学習・キャリア教育などを実施します。」を宣言し、本来業務である照明を題材に、エコプロダクツ展では小中学生対象の環境学習プログラムを提供し、地元小学校へは環境学習の出前講座を実施しています。ここでは出前講座を紹介します。

計画から実施へ
 出前講座は、地元、横浜市立小学校の5年生・6年生を対象に、一昨年から毎年4校ほど実施しています。
小学校への出前講座も社会的にはCSRの一環と言えますが、実施者は学校教育の場であることを忘れず、子供たちに影響を与えることを十分に理解して、講座を計画して実施しなければならないと思います。
 ここでは理科と家庭科、及び総合的な学習の時間の文部科学省学習指導要領とカリキュラムを調べ、今回の出前講座は家庭科の教科書から発展的に繋がるように、身近な住環境と地球環境にやさしい照明を考える環境学習の内容を作成することにしました。
 現場の先生方がやりたくとも、費用や時間面でなかなかできない実験を多く取り入れることで、子供たちが楽しく実感して学んで欲しいと考え、講座テキストや実験用具は、期間をかけて手作りで工夫して製作しました。市販や業者依頼で作成した教材で学習するより、子供たちに手作りであることを知ってもらい、特に実験用具は自分でも考えて工夫すれば出来るかも知れないと思って欲しかったからです。
 日ごろ教育の場で努力されている先生方のサポートとなり、純粋に子供たちの役に立てればと考え、毎回、担当の先生と事前打ち合わせをして可能な限り要望に応えて講座の実施をしました。また、先生方は、子供たちに、身近な横浜市内の会社がボランティア活動で出前講座に来ていることを話して下さり、この出前講座を通して子供たちに、地域や社会、仕事との関わりを知ってもらおうとしていることから、私も当初は背広を着て講師をしていたが、現在は会社の作業着を着て実施し、手伝いに物流課等の人員を同行させ日常の仕事を紹介するなど、働く現場の人が来ていることを紹介しています。

タイトルへの思い
 子供たちには、できれは流行のように地球温暖化防止で環境配慮を始めるのでは無く、まず、あかり(照明)のような、身近なことに興味を持つことのおもしろさ、たのしさを知ってもらうことで、何かを感じて、自分の生活と社会や環境とのかかわりに気が付いて、自ら考えて工夫して行動して欲しいと思いました。
 そこで、タイトルは、子供たちへの思いを込めて、『身近な「あかり(照明)」に興味を持とう』、サブタイトルを「照明とは何? あかりを知るところから始めよう、たのしい環境配慮」としました。

概要
1.講座のねらい
① 実験・体験を通して、児童が身近な現象や物に興味・関心を持つ意識を育成し、日常生活での物の使い方や、買い方・選び方(グリーン購入)の工夫が地球温暖化防止活動へつながることを知ってもらう。
② 手作り出前講座でのボランティア活動や、環境配慮型製品を通して、人も企業も地域や社会・環境との関わりが重要であることを知り、児童が地域・社会の一員として、今の自分は何ができるか、将来は何をできるようになりたいかを考えるキッカケとしたい。
③ 「家庭科」(住環境・採光・明るさ)及び「総合的な学習の時間」の単元に関する児童の興味・関心・意欲を高め、知識を深め、発展的な内容へ展開等、ご指導にあたる先生方のサポートを出来ればと考える。

2.授業方法と授業時間
楽しく実感しながら、理解度を高めるように、実験・ワーク方式・グループ作業と発表を組合せ、クラス単位で6グループに分け、家庭科で実施されている90分授業を基本とする。

3.場所と条件
理科室・視聴覚室・図書室等の暗幕が使用できる教室の提供。

4.講義内容
身近なあかり(照明)に興味を持ってもらうため、あかり(照明)のたのしい基礎実験で身近な関わりを示し、質の良い照明で、ほど良く明るくして、人の住環境にも良く、地球環境も配慮した照明の工夫や手法・選び方を実感しながら学ぶ。
① 光とはなに?(身近なCDの反射から、白色光の中の色の光を見つける。実験ボックスでの白・赤・緑・青の光での赤いリンゴの見え方、光の三原色の実験と解説)
② ほど良く明るくする?(グループでの教室照度測定と発表。実験ボックスでの窓からの光で、黒い壁紙と白い壁紙の部屋、及び、レースカーテンをした部屋の地点別照度測定。講座テキストで、ほど良い明るさと生活、適正照度、全体照明や局部照明等・インテリアでの照明工夫、壁紙のエンボス加工や乳白色の照明器具カバー等の解説)
③ 住宅照明の目的と場面(講座テキストで、適時適照、多灯分散照明、あかりのポイント、住環境の工夫と環境配慮のつながり。省エネにもなるくつろぎのあかり、勉強・食事のあかり等の解説)
④ グリーン購入バトル(電球VS電球形蛍光ランプ。一般蛍光ランプVS省ライン蛍光ランプを現物で比較し、資源・輸送効率・寿命・消費電力測定実験とエネルギー消費効率や、廃棄量等の実験と解説から、どんな理由で、どちらが環境配慮できるか考える)

5.講義の進め方
① 導入(約10分)
自社紹介及び「宇宙から見た地球の夜の写真」と「家庭の消費電力比率の円グラフ」を見て省エネや環境配慮に対する照明の重要性を知ってもらう。次に、講座本体に入るため、実験での安全上のお願い。身近などんなところに、どんなあかり(照明)があるか。 学習の目的、照明とは何か、人の生活・住環境・地球環境へのかかわりと工夫を学ぶことを説明。
② 本体(約65分)
講義内容で挙げた項目を児童に予測・想像してもらいながら、見たり・測ったり・持ったりしながら実験・体験、その結果から発表や説明・解説をして児童の身近なことと結びつけて学ぶ。
③ まとめ(約15分) 環境にやさしい照明のまとめから、最後に「地球温暖化防止活動地球にやさしい行動をしよう!」を児童にお願いし、感想や質問等を受ける。

6.講義の最後に
講義の最後には、児童一人ひとりへの呼びかけとして、「地球温暖化防止活動、地球にやさしい行動をしよう!」と以下の3つを子供たちにお願いしている。
① 『誰でもできる、自分ができる事からしよう。』
「すぐにでもできるエコチャレンジ/チェックシート」を配布して、今日から、自分ができる事をしてください。
② 『自分の周りの人に、環境の環を広げよう。』
今日、勉強したことを家の方に伝えて、配布してある日本電球工業会「あかりの省エネ」を渡して、身近から環境の環(わ)を広げていってください。
③ 『自分だからできる事は何か、考えて実行しよう。』
今は興味を持ったことを勉強して、将来の生活や仕事で自分だからできることは何か考えて、環境配慮や活動ができるようにしてください。
「地球環境を守るには、みなさん一人ひとりの協力が必要です。」と子供たちに自覚を持ってもらえるようにお願いしている。

先生・生徒の感想
実施した小学校の先生や子供たちから、たくさんの感想文等を頂いている一部を原文のままご紹介します。

先生からの感想
『さまざまな具体的実験用具などで話をしていただき、ありがたいと思いました。この次は保護者も一緒に学習したいと思います。』
『先日は、子どもたちのために、省エネについての分かりやすいお話をしていただき、子どもたちもとても楽しかったようです。その後、子どもたちはグループで工作用紙の部屋をつくり、明るさやあたたかさ、通風について学習したのですが、「絵や折り紙で、工夫しよう」という投げかけに、豆電球と乾電池を用意してきて、天井のライトにする児童がいました。こうした豊かな発想が出てきたのも、手作りの教材を工夫していただけたおかげと思います。』

生徒からの感想
『電気の実験、ありがとうございました。CDの光がはんしゃするのが、青、赤、オレンジなどの光があったり、最近の電気は、どんどん細くなっていっているのに、明るさは、かわっていないなんてすごかったです。ありがとうございました。』 『この間は、ありがとうございました。このじゅ業を受けてから、ECOについてもっと、ふかく考えるようになりました。また、ぜひ来てください。』 『この間は、楽しい実験を見せていただき、ありがとうございます。わたしは、蛍光灯をバッグに入れて重さを体験するのが楽しかったです。重さがあんなにちがうと思いませんでした。』 『電気の実験はすごくおもしろかったです。ぼくは理科みたいに実験を見るのは大好です。電気の事をおしえてもらったおかげで電気が好きになりました電気の事をもっとしらべたりしてみたいです。』 『黒い部屋より、白い部屋のほうが明るかったのでわかりました。まどよりはなれている所がくらいことがわかりました。』
『わたしは照度計で日光の強さをしらべる実験がとても楽しかったです。あと、赤・青・緑の照明をまぜる実験で3色まぜたら、たしか、白になったのですごかったです。あと照明の重さくらべであまりにも重さがちがってすごかったです。ありがとうございました。』 『たくさんの実験をして、とても楽しかったです。日本はたくさん電気を使っている事が分かりました。実験をして、はじめて知ったことがたくさんあって、とてもびっくりしました。リンゴを使った実験で、色が変わったりして、おもしろかったです。』 『知らないことがたくさん分かりました。実験などもしてくださってどうもありがとうございます。私は、前にでて実験をしなかったけど、みんなが実験できるとき、いろんな実験ができてたのしかったです。本当にありがとうございました。』
『私は、リンゴが照明の色でリンゴの色が色々な色になってすごいと思いました。あと、かべの色で、へやの明るさが、変わるのは、初めて知りました。』 『この講座を受けて、もっと、地球環境に興味を持ちました。ふだんは自分が気付いて、電気とか消しているけれどこれからは家族協力して、省エネ対策に取り組みたいです。』 『この間は、電気のいろいろな事を教えてくれてありがとうございます。リンゴが赤いのは赤い光だけをはんしゃしてるからや、ECO蛍光灯の重さなどいろいろ教えてもらいました。とくに重さが体験できたのが楽しかったです。ありがとうございます。』
『ぼくは、今回この講座を受けて、電気を消したり、節約することで、地球温暖化を防ぐことに、つながるということが分かりました。』

感想とまとめ
まず感想として、講座内容の企画と作成には苦労したが、実際に講義をしてみると、そこには子供たちの顔があって、準備の苦労を全て忘れさせてくれ、心から実施して良かったと思いました。
子供たちへの講義は、大人向けの講演と異なり緊張は少ないが、いつも責任の大きさを感じながら実施しています。それは、子供たちが興味を持って話しをよく聞いていて、ものごとを素直に吸収するからで、教える側も真剣に向き合う必要があると感じたからだと思います。ボリュームもあり難しい用語や部分も多かったが、私が考えるよりも子供たちはしっかりと講義を理解して、質問や感想を聞いてもその理解力や発想に驚くことも度々でした。
同じ講義を同じ様にしても、学校やクラスで全く雰囲気が異なり、興味の持ち方も異なる。それは講義を進めるにあたっては大変でもありましたが、楽しくもあり、なかなかできない体験ができたと思いました。講座テキストや実験用具の作成から実施と、小学校への出前講座では私自身もたいへん勉強になりました。
ボランティアでの出前講座は、CSR活動のできる企業理念の下に、関係各位の協力があってこそ実施できるもので、早朝から実験の準備で学校へ同行してくれる会社スタッフや、市内小学校へ講座実施の募集をしてくださる横浜市地球温暖化対策事業本部と横浜市教育委員会の方々へ感謝し、また、日ごろ教育の現場で絶え間ない努力をされている先生方へ敬意を表して、小学校への出前講座【あかりの環境学習】活動の報告とします。



((財)日本電球工業会会報誌への執筆をホームページ用にアレンジした文章です。)

2009年4月1日
企画業務部 東使弘三郎